八代亜紀さんの死で考えた事
とある患者さんが、心配で夜も眠れなくなり来院。その人は先日膠原病を疑い来院し、膠原病はないですと、とお話して帰宅させた方。しかし、採血結果の抗核抗体に検査結果として『40倍(+)』と記載されていたため、何故か自分は膠原病の可能性が有る事を見落とされていると勘違いし、不安になり再来院した。なぜなら、『演歌の女王』八代亜紀が膠原病の急速進行性間質性肺炎で亡くなったから。
この検査会社の『抗核抗体40倍陽性』という記載、本気でやめて欲しいと専門医達は考えている。抗核抗体は、少なくとも私が医師になったのが20年数年前だから、その事から80倍以上でやっと陽性と考える膠原病の指標である。80倍でも、膠原病の診療症状がなければスルーするような指標である。なのに、なぜ、40倍から陽性と検査会社は記載するのか。謎である。更に数年前からCRPも0.16以上から陽性とした。CRPが0.16だろうと、0.2だろうと我々には知った事ではないし、誰も困らない。これでは、世の必要以上に考えすぎる患者さん達が心配しすぎて夜も眠れなくなるではないか!!
今日(こんにち)、膠原病診療については、診断能力も、検査も、大分進歩している。しかし、私が医師になった頃から現在も、一部に疾患はやはり死んでしまう。幾つかある疾患の一つが、間質性肺炎の急速進行するタイプである。
中でも、皮膚筋炎で、筋炎症状が乏しく、ゴットロン兆候など皮膚所見があり、抗Jo-1抗体が陰性で急速進行性間質性肺炎があるものを昔から『アミオパティック』と言い、予後不良とされていた。最近では抗MDA5抗体が陽性である事が多いらしい。しかし、治療をやり慣れている人間なら皆知っている事であるが、女性は意外に助かる。勿論担当医は男性でも女性でも関係なく真剣に治療を行う事は同じである。でも女性は助かる。致死レベルに至るのは多くが男性である。
なので、急速進行性間質性肺炎をよーく知っている人間から見たら、八代亜紀が死亡したニュースは、不運なニュースなのである。彼女が死んだのは、2次性肺炎が起きたりして、本当に運が悪かったのか。それとも、どこの医局で治療したのだろうか。私が知る限り、この手の治療を得意とする先生は少なくはない。有名人は、現在は教授になった東邦のK先生、論文を沢山持っている。私の元病棟指導医のN医大のG先生、大出世したよなー。やはり論文を沢山持っている。勉強会でお世話になった元新宿社会保険中央病院(現山手メディカルセンター)部長のT先生、静岡県内にいる呼吸器内科界のトップランナーは浜松医大の教授だろう。私が知るだけで有名所がこれだけいるのだから、もっといるだろう。この分野は花形分野だから、治療の成功を武勇伝にする先生は多い。
しかし、成功が『確実』的なのは、恐らく私が↑に名前を挙げている先生達でしょう。論文を書いている人たちってこと。後の人たちの成功は、料理本を読むように論文を読んでやったまぐれ当たり。だから、誰が八代亜紀を治療したんだろねー、って思うのである。
詳しい話を聞きたい方は是非診察室で相談してください。電話では対応いたしません。あしからず。
院長でした。
2024年1月14日